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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
坂口安吾『風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:いずこへ、青い絨毯、石の思い、オモチャ箱、篠笹の陰の顔、天才になりそこなった男の話、二十七歳、母、魔の退屈、私は海をだきしめていたい、流浪の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 页
六
目も見えず、声もきこえず、ただ、私の孤独な肉慾に応ずる無限の影絵であって欲しいと希っていた。
そして私は、私自身の本当の喜びは何だろうかということに就て、ふと、思いつくようになった。私の本当の喜びは、あるときは鳥となって空をとび、あるときは魚となって沼の水底をくぐり、あるときは獣となって野を走ることではないだろうか。
私の本当の喜びは恋をすることではない。肉慾にふけることではない。ただ、恋につかれ、恋にうみ、肉慾につかれて、肉慾をいむことが常に必要なだけだ。
私は、肉慾自体が私の喜びではないことに気付いたことを、喜ぶべきか、悲しむべきか、信ずべきか、疑うべきか、迷った。
鳥となって空をとび、魚となって水をくぐり、獣となって山を走りたいとは、どういう意味だろう? 私は又、ヘタクソな嘘をつきすぎているようで厭でもあったが、私はたぶん、私は孤独というものを、見つめ、狙っているのではないかと考えた。
女の肉体が透明となり、私が孤独の肉慾にむしろ満たされて行くことを、私はそれが自然であると信じるようになっていた。
六
女は料理をつくることが好きであった。自分がうまい物を食べたいせいであった。