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いずこへ

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

坂口 安吾

坂口安吾『風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:いずこへ、青い絨毯、石の思い、オモチャ箱、篠笹の陰の顔、天才になりそこなった男の話、二十七歳、母、魔の退屈、私は海をだきしめていたい、流浪の追憶。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 页

青空文庫

そのうえ羅府のオリムピックでこれが又一景気だ。先生戦争の方だけは街の様子で、どうやら近いところでやっているなということを感づいていたらしい。

オリンピックの方は銀座の食堂の名前も知らないのだ。新聞を読んだことがなくて新聞社へ試験を受けに出向いたという、勝負は始めから判っているが、勿論美事に落第した。羅府といえばオリンピック、それにハリウッドでも思いだしておけばいいので、太平洋岸に面し気候温暖と書く奴は当節君一人だろうと私が大いに彼の迂闊をせめたところ、君そういう悲しい世の中かねえといって嘆いていたが、こういう不思議な先生だから私が自動車にひかれたというとギックリし、それからひどく羨ましがった。

★

この男の意見によると古来の天才というものは一列一体にその母親が不注意で、幼年時代に乳母車をひっくり返して頭を石に叩きつけるというようなことを例外なしにやっているものだという。つまり叩きつけた部分が音楽だとこれがモツァルトになりショパンになる。そこで先生私を天才なみに祝福した。

ところが世の中はよくできている。この詩人が四ヶ月ほど前自動車にひかれた。