轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
坂口安吾『風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:いずこへ、青い絨毯、石の思い、オモチャ箱、篠笹の陰の顔、天才になりそこなった男の話、二十七歳、母、魔の退屈、私は海をだきしめていたい、流浪の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 页
「ああ! 俺は実に悪者だ……」
私が斯様に断末魔のような呻きを最後に発すると、辰夫は漸く私の腕をしたたかに握って泪を泛べ、
「本当に君に済まない。君のような善良な友達を斯んなにも苦るしめて、僕は怎うしていいか分らない……」
その詠歎を終りとして、私達は暗然と項垂れ合い、扨て私は窓の外へ目を逸らして、今にも空気になろうとする私の身体を感じつづけていた。
この病院の面会室は本来は講堂と称せられる所で、舞台なぞも設けられた二百畳もある程の板敷の部屋であった。その広々とした部屋の隅に、まるで冷めたさに吹き寄せられたようにして一つの卓子と数脚の椅子らしい破れたものが置かれてある。
私が此処へ通ったのは丁度一冬の間、秋の終りから春になろうとする寒い一季節の間であった。私は此の隅にうずくまって暫く一人で待たされる間、重苦しさで身動きも懶い気持になるのであった。すると此の部屋は痛々しい硝子張りの窓ばかりだが、それを通し、何もない庭の土、鈍重な冬の光を冷え冷えといぶしている黒く侘しい土肌と、それを越えて一棟の病室が覗かれ、檻の中では病人達の蠢めく様が眺められた。彼等は演説をしたり、けたたましい笑声を発したり、呂律の廻らない破れそうな流行唄を喚いている。