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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
坂口安吾『風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:いずこへ、青い絨毯、石の思い、オモチャ箱、篠笹の陰の顔、天才になりそこなった男の話、二十七歳、母、魔の退屈、私は海をだきしめていたい、流浪の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 页
首をくくるもあり半身焼けただれているもあり明らかに殺されている者もあると言うのであった。然し八十円の報酬に目がくらんで、番人を希む者は絶えた例がないと言う。いまだにそうか私は知らない。
例の日本一という高原鉄道小海線が去年十一月開通した。八ヶ岳の麓千米ほどの高原を通るのである。私はこれに乗り、もし閉じられていないなら季節の終りの本沢温泉を訪ねてみようと思った。八十円に目のくらんだ番人がいたら茶飲み話をしながら素朴な心境を探りたいとも考えていた。去年の十一月の終りのことだ。
出掛ける途中寄り道をした。中学からの友達で哲学をやっていた男が発狂し郊外の某精神病院に這入っている。少年時代から周期的に錯乱が起る男で、もう退院しても仕方がないというところから一生病院にいる決心をきめているが、肺病で余命いくばくもないから一目会いたいという手紙をよこした。私は会いに行ったのだ。
会ってみると肺もそれほど悪くはない。そう言わないと私が会いに来てくれないと考えて書いたのだと言っていたが、寂寥に悩んでいるのである。狂人といっても発作の起らない限りは殆ど常人と変りがない。