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ふうりゅうばけものやしき

風流化物屋敷

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,228 字 · 40 页

青空文庫

こう呶鳴ってごろりと横になった。床下の声はそれからも続いた、棺箱を爪でひっ掻くぞっとするような音も。……けれど旦那も黙ってはいなかった、二三ど寝返りをうったと思うと鼾をかき始めた、しかもそこらにありふれた俗な種類の鼾ではない、それは、極めて組織立った五音階の轢音と擦音とより成り、繰返されるフォルテッシモの部分に於て巧みに主題を表現するのであるが、その単純な主題の反復変化するだけでかくの如き荘重華麗な効果をあげる例は、モウリス・ラベル作るところの交響詩曲「ダフネとクロエ」以外には類が無いであろう。床下の声も物音も止んだ、その音楽的効果に於て、とうてい敵すべからずとみたに違いない、それからもどこかで襖の開く音や、廊下をゆく忍び足の音などが起った。天床でとつぜん、「けらけら」と女の笑う声もした、これらは床下の声よりも洗練された技巧と表現をもっていたが、結果としては旦那の鼾の伴奏に役立っただけである。……権八は夜が明けてから帰って来た、旦那は化物にとり殺されたか、それとも夜なかに、どこかへ高飛びをしたに相違ない、特別契約で倍額の給銀を前取りにしているから、そうなれば占めたものだ、こう考えながら家へはいった、それから鼻唄などのいい気持で廊下をずっと旦那の部屋へゆくと、蚊帳が釣ってあって夜具が敷いてある、しかし旦那