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めしまつま
飯待つ間
正岡 子規
正岡子規『飯待つ間』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飯待つ間、犬、画、句合の月、九月十四日の朝、くだもの、ランプの影、熊手と提灯、徒歩旅行を読む、病牀苦語、車上の春光、煩悶、初夢、夢、病、墓、酒、権助の恋、恋。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,525 字 · 126 页
これは放免になった歓びの叫びであった。この時の嬉しさは到底いう事も出来ぬ。自分は人力車で神戸の病院へ行くつもりであったから、肩には革包をかけ、右の手にはかなり重い行李を提げ、左の手は刀を杖について、喘ぎ喘ぎそろそろと歩行いて見たが、歩行くたびに血を咯くので、砂の上へ行李を卸して腰かけて休んで居た。声を揚げて人を呼ぶ気力も最うない。折よく連の人が来たので、自分の容態を話し、とても人力には乗れぬから釣台を周旋してくれまいかと頼んだ。その人は快く承諾して、他の連と相談した上で一人を介抱のために残して置いて出て往た。このさいに自分が同行者の親切なる介抱と周旋とを受けた事は深く肝に銘じて忘れぬ。二時間ばかり待ってようよう釣台が来てそれに載せられて検疫所を出た。釣台には油単が掛って居て何も見えぬけれども人の騒ぐ音で町へ這入った事は分る。殊に往来の多いのと太鼓などの鳴って居るのとで考えると土地の祭礼であるという事も分った。上陸した嬉しさと歩行く事も出来ぬ悲しさとで今まで煩悶して居た頭脳は、祭礼の中を釣台で通るというコントラストに逢うてまた一層煩悶の度を高めた。