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ぎょげんき

魚玄機

森 鴎外

「中央公論」1915(大正4)年7月

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 9,866 字 · 20 页

青空文庫

温は云った。「卿の詩を善くすることを聞いた。近業があるなら見せて下さい」と云った。

玄機は答えた。「児は不幸にして未だ良師を得ません。どうして近業の言うに足るものがありましょう。今伯楽の一顧を得て、奔して千里を致すの思があります。願わくは題を課してお試み下さい」と云ったのである。

温は微笑を禁じ得なかった。この少女が良驥を以て自ら比するのは、いかにもふさわしくないように感じたからである。

玄機は起って筆墨を温の前に置いた。温は率然「江辺柳」の三字を書して示した。玄機が暫く考えて占出した詩はこうである。

賦得江辺柳

翠色連荒岸。 烟姿入遠楼。

影鋪秋水面。 花落釣人頭。

根老蔵魚窟。 枝低繋客舟。

蕭々風雨夜。 驚夢復添愁。

温は一誦して善しと称した。温はこれまで七たび挙場に入った。そして毎に堂々たる男子が苦索して一句を成し得ないのを見た。彼輩は皆遠くこの少女に及ばぬのである。

此を始として温は度々魚家を訪ねた。二人の間には詩筒の往反織るが如くになった。

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温は大中元年に、三十歳で太原から出て、始て進士の試に応じた。