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はとつかい

鳩つかひ

大倉 燁子

「富士 九巻八号」1936(昭和11)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,680 字 · 30 页

青空文庫

「そこまで分っているのに何故早く捕まえなかったんだ?――高飛びしたらどうする?」

「逃げやしない。利口な女だから逃げりゃ自分に疑がかかる位は承知している。――僕の話は半分想像だからね、確証が掴みたかったんだ」

「じゃ、どうして天華堂を疑って電話なんかかけたんだね?」

「彼女と共謀じゃないかと思った」

車はホテルの手前で停った。

「保険会社の女外交員が、こんな立派なホテルに住んでいるのか?」

立松は呆れて眼を瞠った。赤星は笑いながら、

「これは彼女の隠れ家だ。ここでは岩崎文代と称している。このホテルは西洋人が多いから、ダイヤを売るには何かと都合がいいんだろう。岩城文子としての住居は小さなアパートの一室なんだ」

一同はエレベーターで五階に昇った。岩城文子の室の前に立った、赤星は扉を静かにノックした。

室内はひっそりとして、人がいないようだったが、少時すると床を歩く衣擦れの音がして、内から扉を細目に開けて廊下を覗こうとした処を、素早く一人の刑事が肩で押し開けて中に入った。立松と赤星はその後に続いた。文子は真青になって下唇を噛み、恨めしそうに赤星を見ながら、顔にかかる遅れ毛を耳の後へ掻き上げた、その細い指には眩しいようなダイヤの指輪が輝いていた。