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ばくせきざんそぞうのしさするもの

麦積山塑像の示唆するもの

和辻 哲郎

名取洋之助「麦積山石窟」岩波書店、1957(昭和32)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,507 字 · 9 页

青空文庫

十分である。寸法が精確に測定されていながら、写像がぼんやりしているよりも、像の印象が精確に捕えられていて、寸法のぼんやりしている方が、われわれにはずっとありがたい。

さてそのような観点から麦積山の写真をながめていて、まず痛切に感ずるところは、ここにある魏の時代の仏像がいかにも推古仏の源流らしい印象を与えること、そうしてそれが塑像であることと何らか密接な関連を持っているらしく見えることである。

雲岡の数多い石仏は、その手法の上から推古仏の源流であること疑いがないといえるであろうが、しかしその与える印象においては推古仏とだいぶ違うものである。その豊満な肢体や、西方人を連想させる面相や、それらを取り扱う場合の感覚的な興味などは、推古仏にはほとんどないものと言ってよい。推古仏の特徴は肢体がほっそりした印象を与えること、顔も細面であること、それらを取り扱う場合に意味ある形を作り出すことが主要なねらいであって、感覚的な興味は二の次であることなどであるが、そういう特徴を持つものが雲岡の石仏の中に全然ないとは言いきれないにしても、例外的にしかないとは言えるであろう。