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くろてぐみ

黒手組

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页

青空文庫

惟うに今度の黒手組事件は、よくある不良青年の気まぐれなどではなくて、非常に頭の鋭い而も極めて豪胆な連中の仕業に相違ありません。

さてこの兇賊の御見舞を受けた伯父の一家では、今も云います様に、伯父夫妻を始め蒼くなってうろたえていました。一万円の身代金はとられる、娘は返して貰えないというのでは、流石実業界では古狸とまで云われている策士の伯父も、手のつけ様がないのでしょう。いつになく私の様な青二才を手頼りにして何かと相談をする始末です。従妹の富美子は当時十九の而も非常な美人でしたから、身代金を与えても戻さぬ所を見ると、ひょっとしたら無慚にも賊の毒手に弄ばれているのかも知れません。そうでなかったら、賊は伯父を組し易しと見て、一度では慊たらず二度三度身代金を脅喝しようとしているのでしょう。何れにしても伯父としてはこんな心配な事はありません。

伯父には富美子の外に一人の息子がありましたが、まだ中学へ入った許りで力にはなりません。で、さしずめ私が、伯父の助言者という格で色々と相談したことですが、よく聞いて見ますと、賊のやり方は噂にたがわず実に巧妙を極めていて、何となく妖怪じみた凄い所さえあるのです。