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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

ねえ法水君、この超自然はいったいどうなるんだい。ああ徐々に、鎮子の説の方へまとまってゆくようじゃないか」

未だ現実に接していないにもかかわらず、すべての事態が、明白に集束して行く方向を指し示している。やがて、開け放たれた拱廊の入口が眼前に現われたが、突当りの円廊に開いている片方の扉が、いつの間にか鎖じられたとみえて、内部は暗黒に近かった。その冷やりと触れてくる空気の中で、微かに血の臭気が匂ってきた。それが、捜査開始後、未だ四時間にすぎないのである。それにもかかわらず、法水等が暗中摸索を続けているうちに、その間犯人は隠密な跳梁を行い、すでに第二の事件を敢行しているのだ。

殺人現場の図

法水は、すぐ円廊の扉を開いて光線を入れてから、左側に立ち並んでいる吊具足の列を見渡しはじめた。が、すぐに「これだ」と云って、中央の一つを指差した。その一つは、萌黄匂の鎧で、それに鍬形五枚立の兜を載せたほか、毘沙門篠の両籠罩、小袴、脛当、鞠沓までもつけた本格の武者装束。面部から咽喉にかけての所は、咽輪と黒漆の猛悪な相をした面当で隠されてあった。そして、背には、軍配日月の中央に南無日輪摩利支天と認めた母衣を負い、その脇に竜虎の旗差物が挾んであった。