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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
の中で、ルシファの追放を描いている一句に挾んだ。
「ところが、このとおり」真斎は平然としながらも、妙に硬苦しい態度で答えた。「隠扉もなければ、揚蓋も秘密階段もありません。ですから、確実に、再び開く事なし――なのです」
「ワッハハハハ、いやかえって、異常に空想が働き、男自ら妊れるものと信ずるならん――かもしれませんよ」と法水が爆笑を揚げたので、それまで、陰性のものがあるように思われて、妙に緊迫していた空気が、偶然そこで解れてしまった。真斎もホッとした顔になって、
「それより法水さん、この方を儂は、処女は壺になったと思い三たび声を上げて栓を探す――だと思うのですが」
この奇様な詩文の応答に、側の二人は唖然となっていたが、熊城は苦々しく法水に流眄をくれて、事務的な質問を挾んだ。
「ところで、お訊ねしたいのは、遺産相続の実状なんです」
「それが、不幸にして明らかではないのですよ」真斎は沈鬱な顔になって答えた。「勿論その点が、この館に暗影を投げていると云えましょう。算哲様はお歿りになる二週間ほど前に、遺言状を作成して、それを館の大金庫の中に保管させました。そして、鍵も文字合わせの符表もともに、津多子様の御夫君押鐘童吉博士にお預けになったのですが、何か条件があるとみえて、未だもって開封されてはおりません。