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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

だって、易介や伸子さんとは違って、私達は無防禦ではございませんものね。ですから、たとえば遣り損じたにしても、捕えられるのが人形でしたら、また次の機会がないとも限りませんわ」

「さよう、どのみち三人の血を見ないまでは、この惨劇は終らんでしょうからな」レヴェズ氏は脹れぼったい瞼を戦かせて、悲しげに云った。「ところが、儂どもには課せられている律法がありますのでな。それで、この館から災を避けることは不可能なのです」

「その戒律ですが、たぶんお聴かせ願えるでしょうな?」と検事はここぞと突っ込んだが、それをクリヴォフ夫人はやにわに遮って、

「いいえ、私達には、それをお話しする自由はございません。いっそ、そんな無意味な詮索をなさるよりも……」とにわかに激越な調子になり声を慄わせて、「ああ、こうして私達は暗澹たる奈落の中で、火焔の海中にあるのです。それを、貴方は何故そう好奇の眼をって、新しい悲劇を待っておられるのでしょう?」と悲痛な声でヤングの詩句を叫ぶのだった。

法水は三人を交互に眺めていたが、やがて乗り出すように足を組換え、薄気味悪い微笑が浮び上ると、

「さよう、まさに、永続、無終なんです」