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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

まだ、十二宮には、磨羯宮・天秤宮・巨蟹宮・白羊宮と、以上の四座が残されている。それに法水は、上図どおりのフリーメーソンABCを当てたのだ。

それによると、磨羯宮のL形がB、天秤宮の「長方形」形がD、巨蟹宮の「□<・」形がR、そして、白羊宮の「Π」に似た形がEとなる。それを、さらに法水は、フリーメーソン暗号のもう一つの法である交錯線式(ジグザグ記法―。この方法は、アテネの戦術家エーネアスが、自著 Poliorcetes 中の第三十一章に記載せしに始まる。方眼紙にABCを任意に排列し、それを先方に通じて置いて、通信は、それを連らねるジグザグの線のみを以てす)を用いて、磨羯宮のBから始まっている線状の空隙を辿っていった。そうして、ついに混乱を整理して、秘密ABCの排列を整えることが出来た。そこに、検事と熊城は、不意に迷路の彼方で闇黒界の中に差し込んできた一条の光明を認めたのであった。その神々しい光は、この事件に犯罪現実として現われた、十指にあまる非合理性を、必ずや転覆するものに相違ないのである。法水の驚嘆すべき解析によって、黒死館殺人事件は、ついに絶望視されていた終幕に入ったのではあるまいか。