轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
しかし、君はいま、虹のことをレヴェズの恋文と云ったね?」検事が聴き咎めて、自分の耳を疑うような面持で訊ねたが、それに法水は慨嘆するような態度で、彼特有の心理分析を述べた。
「ああ、支倉君、君はこの事件の暗い一面しか知らないのだ。何故なら君は、あの赤毛のクリヴォフが宙吊りになる直前に、伸子が窓際に現われたのを忘れてしまったからだよ。だから、レヴェズはそれを見て伸子が武具室にいると思い、それから噴泉の側で、あの男の理想の薔薇を詠ったのだよ。ところで君は、『ソロモンの雅歌』の最終の章句を知っているかね。吾が愛するものよ、請う急ぎ走れ。香ばしき山々の上にかかりて、鹿のごとく、小鹿のごとくあれ――と。あの神に対する憧憬を切々たる恋情中に含めている――まさに世界最大の恋愛文章だが、それには、愛する者の心を、虹になぞらえて詠っているのだ。あの七色――それはボードレールによれば、熱帯的な狂熱的な美しさとなり、またチャイルドが詠うと、それから、旧教主義の荘重な魂の熱望が生れてくるのだ。また、その抛物線を近世の心理分析学者どもは、滑斜橇で斜面を滑走してゆく時の心理に擬している。