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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

しかし、耳に入ると、レヴェズは喪心したように、長椅子へ倒れかかったが、彼はかろうじて踏み止まった。そして頭をグイと反らして、激しい呼吸をしながら、

「貴方は、何かの機会に、一人の犠牲を条件に、彼女を了解させたのですか。もう儂には、この上釈明する気力もないのです。いっそ、護衛をやめてもらおう。儂の血でこの裁きをしたら、いつか、その舌の根から聴くことがあるでしょうから」と異常な決意を泛べて、あろうことか、護衛を断るのだった。そして、いっさいの武装を解いた裸身を、ファウスト博士の前に曝させることを要求した。それに、法水はまた皮肉にも、応諾の旨を回答して、室を出た。いつも、彼等がそこで策を練り、また訊問室に当てているダンネベルグの室では、検事と熊城がすでに夜食を終っていた。その卓上には、裏庭の靴跡を造型した二つの石膏型と、一足の套靴が、置かれてあった。そして、それがレヴェズの所有品で、ようやく裏階段下の、押入れから発見されたことが述べられた。がその頃には、押鐘博士は帰邸していて、食事が済むと、今度は代り合って、法水が口を開いた。そして、レヴェズとの対決顛末を、赤いバルベラ酒の盃を重ねながら、語り終えると、