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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

十年一日のごとくに、犯人は糸を使っているんだよ。ところで、僕の考えていることを実験してみるかな」

そして、鍵がまず扉の内側に突っ込まれた。けれども、彼が一旬日ほど以前、聖アレキセイ寺院のジナイーダの室において贏ち得たところの成功が、はたして今回も、繰り返されるであろうかどうか――それがすこぶる危ぶまれた。と云うのは、その古風な柄の長い鍵は、把手から遙かに突出していて、前回の技巧を再現することがほとんど望まれないからであった。二人が見戍っているうちに、法水は長い糸を用意させて、それを外側から鍵孔を潜らせ、最初鍵の輪形の左側を巻いてから、続いて下から掬って右側を絡め、今度は上の方から輪形の左の根元に引っ掛けて、余りを検事の胴に繞らし、その先を再び鍵穴を通して廊下側に垂らした。そうしてから、

「まず支倉君を人形に仮定して、それが窓際から歩いて来たものとしよう。しかし、それ以前に犯人は、最初人形を置く位置について、正確な測定を遂げねばならなかった。何にしても、扉の閾の際で、左足が停まるように定める必要があったのだ。何故なら、左足がその位置で停まると、続いて右足が動き出しても、それが中途で閾に逼えてしまうだろう。