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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

二、犯罪現象としての押鐘津多子に――。

すでに明白なのは、神意審問会の際張出縁に動いていた人影と、最初乾板を拾いに来た園芸倉庫からの靴跡、それに薬物室の闖入者――と以上の三人が、算哲を斃し、あの夜ダンネベルグ夫人の室に侵入した人物と同一人だという事だった。そうすると、当然問題が、ダンネベルグ事件に一括されて、それには、否定すべからざる暗影を持つ押鐘津多子が、しかも、動機中の動機とも云うべきものを引っさげて、登場して来るのだった。勿論、確実な結論として律し得ない限りは、それ等の推測も、無の中の一突起にすぎないではあろうが。

再び旧の室に戻って、椅子の上に落ち着くと、法水は憮然と顎を撫でながら驚くべき言葉を吐いた。

「実は、算哲の屍骸の中に、二つの狂暴な意志表示が含まれているのだよ。一度はディグスビイの呪詛のために殺され、そうして蘇生したところを、今度はファウスト博士が止めを刺したのだ。つまり、あれは二重の殺人なんだよ」

「なに、二重の殺人※(感嘆符疑問符、1-8-78)」と熊城が驚きのあまりに問い返すと、法水は大階段の裏――を、実に三度転倒させて、いよいよ最終の帰結点を明らかにした。