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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
すると、当然あの繊維が収縮を始めて、扉の開きがしだいに狭められてゆくだろう。その時、顳を射った拳銃が、手許から投げ出されて、そうした機みに、二つの扉の間へ落ちたのだ。そうして、何分か後に扉が鎖されると、前もって立てておいた掛金が、パッタリと落ちる。いや、それよりも扉の動きが、拳銃を廊下へ押し出してしまうじゃないか。勿論竜舌蘭の繊維は、針を引き抜いて、それごと鍵穴の中に没していったのだ」と言葉を切って、長く深く、慄えがちな息を吸い込んだ。そして、真黒な秘密の重荷とともに、再び吐き出された。
「ところが熊城君、そうして他殺から自殺に移されるということになると、そこに、どんな光によっても見ることの出来ない、伸子の告白文が現われてくるのだ。それは気紛れな妖精めいた、豊麗な逸楽的な、しかも、ある驚くべき霊智を持った人間以外は、とうていその不思議な感性に触れることが出来ないのだ。伸子は、あの陳腐きわまる手法に、一つの新しい生命を吹き込んだ……」
「なに、告白文※(感嘆符疑問符、1-8-78)」と検事は、脳天まで痺れきったような顔をして、莨を口から放し、ぼんやりと法水の顔を見詰めている。