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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
と鎮子は静かに云った。「恐らく最後の一人までも殺されてしまうでしょう」
法水は驚いて、しばらく相手の顔を瞶めていたが、
「いや、少なくとも三つの事件までは……」と鎮子の言を譫妄のような調子で云い直してから、「そうすると久我さん、貴女はまだ、昨夜の神意審問の記憶に酔っているのですね」
「あれは一つの証詞にすぎません。私には既から、この事件の起ることが予知されていたのです。云い当ててみましょうか。死体はたぶん浄らかな栄光に包まれているはずですわ」
二人の奇問奇答に茫然としていた矢先だったので、検事と熊城にとると、それがまさに青天の霹靂だった。誰一人知るはずのないあの奇蹟を、この老婦人のみはどうして知っているのであろう。鎮子は続いて云った。が、それは、法水に対する剣のような試問だった。
「ところで、死体から栄光を放った例を御存じでしょうか」「僧正ウォーターとアレツオ、弁証派のマキシムス、アラゴニアの聖ラケル……もう四人ほどあったと思います。しかし、それ等は要するに、奇蹟売買人の悪業にすぎないことでしょう」と法水も冷たく云い返した。
「それでは、闡明なさるほどの御解釈はないのですね。