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こくてん
黒点
豊島 与志雄
――或る青年の「回想記」の一節――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,665 字 · 62 页
私はがっかりした。次には泣きたくなった。がそれをじっと我慢してやった。
「何を食べるの……珈琲……お菓子……ホット・クラレット……。」
私はただうむうむと気のない返辞をした。
私はもう何にも考えもせず感じもせずただぼんやりしていた。一人になっても、お清がやって来ても、同じことだった。そして、甘い洋菓子と苦い珈琲とに手を出した。
「案外つまんないな。」
「何が案外なの。」
そして彼女が初めて心からにっこり笑ってくれたので、私はいくらか落付いた。
然しその晩私は全く気がぽーっとしていたらしい。細かな出来事は少しも覚えていないし、大体の事柄だって霧を通して眺めるようにぼやけている。はっきりしてるのはただ、私が次第に人の注意の的となっていったことだけである。
カフェーの中は客が殖えていった。お清は大抵の者と知り合いらしかった。通りがかりに何かと冗談を云い合っていた。
「何だい、あの子供は。」
そういう声が私にも聞えた。
「あたしの弟よ。」とお清は答えていた。
「うまく云ってらあ。君の子供だろう。混血児は……早いって云うからな。」
その連中はどっと笑った。
「いいわよ。