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くろべきょうこく

黒部峡谷

木暮 理太郎

「東京朝日」1919(大正8)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,752 字 · 26 页

青空文庫

其中本流は嘉門次の所謂祖父谷であって、鷲羽ヶ岳北方の小鷲と呼ぶ一尖峰と、雲ノ平(奥ノ平又は池ノ平等の別名がある)高原の東端に聳ゆる祖父岳とを連ねている山稜の南側に発源している。祖父岳が雲ノ平の熔岩台地を流し出さなかった以前には、或は黒部五郎岳の大カールから発する五郎沢の方が本流であったかとも想われる。鷲羽ヶ岳が黒部川の水源であることは、古い地誌にも記されているが、其位置を飛信越の三国界に在るものとして書いたり図したりしてあるのは、その方が正しいのか否か、資料が得られないので判断の下しようがない。唯蓮華岳なる名は信州の猟師や山案内人の称呼であって、極めて新しいものである。

黒部川が山の斜面を離れて、谷らしい形をなし始めるのは、この蓮華岳の北方であり、峡流らしくなるのは、薬師沢と合流してからである。更に立石で岩苔谷が入ってからは、全くの峡流となって、ここに奥廊下(上廊下)の絶壁が始まるのであるが、何処をどのように流れているのか、山の上からでは到底望まれない。唯一度数河乗越附近を通る人にとろりとした青黒い色の流れをちらと覗かせて、再び中廊下の崖下に隠れたまま、東沢の合流点近くなるまでは、容易く人の寄り付くことを許さない。