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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《それでも私は行く(それでもわたしはいく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 頁

青空文庫

三

「しかし、君勇ともあろうものが、そんなはしたないことをしてまで、客を奪おうとするだろうか」

そんな女だとは、どうしても考えられなかった。

「――だいいちあんな小郷に靡いたりするような女ではない」

では、何のために……と、考えて、鶴雄はふと、

「――もしかしたら、君勇は鈴子の身代りに立ったのではないだろうか」

と想像した。

君勇の歌声の寂しさは、それでうなずけるようだった。

鶴雄の年齢にしてもませた考え方だったが、君勇が鶴雄の前で、鈴子のことを言った時のうるんだ眼や、歌声の寂しさを考えると、鶴雄はしぜんにそんな考えを抱いてしまった。

すると、再び小郷という人間への憎悪が、鶴雄を襲った。

三

小郷への憎悪は、しかし、もはや嫉妬とは違ったものであった。嫉妬ほど激しい感情ではなかったが、しかし、嫉妬よりも深いもの、嫉妬の対象がなくなっても、なおかつ根強く残る――いわば、義憤のようなものであった。

「あんな男は生かして置けない」

鶴雄はそう呟いた。

そして、そんな自分に驚いていた。

夕方、下鴨の小郷の家で、はからずも会うた弓子の話では、小郷は細君に姦通されているという。