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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《それでも私は行く(それでもわたしはいく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 頁

青空文庫

「――つまりは、あいつは虫けらなんだ。南京虫なんだ」

だから、あんな奴は殺してもいいと、ラスコリニコフみたいに呟いている自分に、しかし鶴雄はどきんとしたのだ。

そして、夜どおし「罪と罰」に読み耽り、夜が明けて、部屋の中へ朝の日が射し込んで来てから、やっと眠りについた。

そして、どれだけ眠ったか、斧をふるって小郷を殺している夢に驚いて、ぐっしょり汗をかきながら眼をさました時は、もうひる近かった。

「なんだ、夢だったのか」

鶴雄は額の汗を拭きながら、寝床を出ると、ふと、弓子との約束を想い出した。

誰にせよ、約束した相手を待たせて平気でおるほど、鶴雄は気が強くなかった。

あわてて飯をかきこんで、支度をすると、鶴雄は先斗町の路地を出て行った。

べにやはつい鼻の先だった。

暖簾をくぐって、見廻した途端鶴雄はおやと思った。

待っていたのは、弓子ではなく意外にも宮子――小郷の妹の宮子だった。

四

宮子がなぜ、べにやへ来ていたのか。――言いかえれば、宮子がなぜ、鶴雄を待っていたのか――鶴雄が今日の正午にべにやへ来ることを、なぜ知っていたのか。

記憶の良い読者は覚えているだろう。