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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《それでも私は行く(それでもわたしはいく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 頁
先斗町
一
宮子は弓子を案内して、二言三言挨拶が済むと、座を外して応接室の方へ戻って行った。
がドアをひらくと、もうそこには鶴雄の姿は見えなかった。
宮子はがっかりしてお雪を呼んだ。
「お客様は……?」
「学生はんどすか」
「そう、学生さん」
「たった今、お帰りにならはりました」
「あたしに言づけはなかった?」
「はア、何にも……」
お雪はそう言ったが、急に想い出して、
「――あ、そうそう、あのお客様にこれを渡してくれいうて、ことづかりました」
「お見せ?」
紙片に、鉛筆書きで、
「待っていようと思いましたが、サイコロの命令で先に帰ります。明日正午、西木屋町のべにやというしるこ屋で待っています」
弓子への置手紙だった。
宮子はいきなり破り捨てようとしたが、何思ったか、にやりと笑うと、その紙片を帯の間へ入れた。
そして、弓子のいる茶室の方へ何食わぬ顔で廊下を伝って行った。
先斗町
一
先斗町に夜が来ていた。
桔梗家の二階――鴨川をへだてて、四条京阪のプラットホームや、南座の灯が見える部屋で、小郷虎吉は芸者や仲居を相手に、かなり酔っていた。
「君勇はまだか」
先斗町へ来て、君勇の顔が見えぬと、もう小郷は糞面白くなかった。