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ロザリオのくさり
ロザリオの鎖
永井 隆
線上閱讀永井 隆《ロザリオの鎖(ロザリオのくさり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,351 字 · 213 頁
ただ冷たかったことしか覚えてはおらぬから多分私が五つぐらいの時だったろう。前後は忘れてしまったが、とにかく私が何かひどく生意気な口答えをしたのであったらしい。母はいきなり私をとらえ、着物をぬがせて真っ裸にした。ばたばた手足を振りまわすのを軽々とかかえ上げ、座敷の端へ持っていって、さらりと障子をあけた。外は雪だった。おそらく軒の下には二メートルの高さに雪が積んでいたように覚えている。その深い雪の中へいきなり私を投げこんでしまったのだ。体じゅうにしみ渡った冷たさとすっかり五体をうずめた白色の不安とが今なおそのまま私の感覚に残っている。
わがままで、きかん坊で、そのくせ泣き虫だった私を、素直な強い子にするために、母はさぞかし心を砕いていたのだろうと、これまたこのごろしきりに思われる。
雪の中へ私を素っ裸にして投げこんだ母だったが……私が山東省で共産軍と戦っていたころ、昭和十四年の一月、地は深く凍り、雪がしきりに降る夜のことだった。夢で飯石村のあの家へ私は帰り着いた。台所の大黒柱のかげから母が現われた。丸まげにゆっていた。まあ、隆ちゃん。寒かったろ。さ、これをお上がり──そう言って差し出してくれたのが、湯気の立つみそ汁だった。