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せけんし
世間師
小栗 風葉
線上閱讀小栗 風葉《世間師(せけんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,390 字 · 36 頁
二十七八の色の青い小作りの中年増で、髪を櫛巻にしている。昨夜私の隣に寝ていた夫婦者の女房だ。私の顔を見ると、「お早う。」と愛相よく挨拶しながら、上り口でちょっと隣の部屋の寝床を覗いて、「まだ寝てるよ。銭占屋の兄さん、もう九時だよ。」
「九時でも十時でも、俺あ時間に借りはねえ。」と寝床の中で言った。
すると、女は首を竦めて、ペロリと舌を出して私の顔を見た。何の意味か私には分らなかった。擦違うと、干鯣のような匂のする女だ。
階下へ降りてみると、門を開放った往来から見通しのその一間で、岩畳にできた大きな餉台のような物を囲んで、三四人飯を食っていた。めいめいに小さな飯鉢を控えて、味噌汁は一杯ずつ上さんに盛ってもらっている。上さんは裾を高々と端折揚げて、土間の竈の前で立働いていた。手拭を下げて私の降りてきたのを見ると、すぐ、「井戸は外だよ。」と言って、自分の足元にあった古下駄を貸してくれた。口数が少なくテキパキしたものだ。
宿の横の、土管焼の井筒が半分往来へ跨がった井戸傍で、私はそこに投りだしたブリキの金盥へ竿釣瓶の水を汲みこんで、さて顔を洗いながら朝飯の当を考えた。