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せけんし

世間師

小栗 風葉

線上閱讀小栗 風葉《世間師(せけんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,390 字 · 36 頁

青空文庫

三

と私は当座れを言う。

「明日だって、どうせ外へ出てでかすんだろうがね、それじゃ私の方で困らあね。今夜何か品物でも預かっとこう。」

「品物といって――何しろ着のみ着のままで……」

「さっきお前さんが持って上った日和下駄、あれは桐だね。鼻緒は皮か何だね。」

「皮でしょう。」

「お見せ。」

寝床の裾の方の壁ぎわに置いてあったのを出して見せると、上さんはその鼻緒を触ってみて、

「じゃ、これでも預かっとこう。お前さんが明朝出かける時には、何か家の穿物を貸してあげるから。」

上さんはそのまま下駄を持って階下へ降りて行った。たかが屋根代の六銭にしても、まさか穿懸けの日和下駄が用立とうとは思いも懸けなかったが、私はそれでホッと安心してじき睡ついた。

三

翌朝私が目を覚した時には、周囲の者はいずれももう出払っていたが、私のほかに今一人、向うの部屋で襤褸布団に裹まっている者があった。それは昨夜遅く帰った白い兵児帯の男だ。私は昨日からの餒じさが、目を覚ますとともに堪えがたく感じてきて、起き上る力もない。そっと仰向きに寝たまま、何を考える精もなく、ただ目ばかりパチクリ動かしていた。

見るともなく見ると、昨夜想像したよりもいっそうあたりは穢ない。