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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

。現世の真面目な勤勉が、何らそれに正比例する報いを保証しない。案外に人目を胡麻化して追従贈賄を行うと利目がある。そのような事実は人心を極度に自棄的にするものである。人を怨み、怒り、己の生涯に不平不満を持つことは常住となる。けれどもそれは、それまでの仏法の教にしたがえばすべて堕獄の因である。如何に己の心を良く保とうとしても、ちいさな個人の意志が己を制し切れないほどに、世の中の相は人心を刺戟しやすく、怪奇で混乱している。もし人心の帰趨するところに流されるのを潔しとしないで、独り孤高の清節を徹そうとすれば、誇りかな心は逆にまた驕慢の罪を犯すこととなろう。

こうした現実に応ずるものとして、浄土思想は急速に力を伸ばしてゆく。現世に如何に罪をつくろうとも、最後の一念によって極楽浄土に引摂されるという弥陀の本願の教えが、ただ一つ人心を救う宗教でありうる。森厳な道理を世相の推移の中に探究しようとしても、それは常人には不可能の業にすぎなかった。その上わるいことに、この時代は、どんな計算にしたがうにしても、仏の予言の末法の世がおとずれつつあったのである。末法の世とは仏法が全く力を失う時代をいうのであるから、「末世が来った」