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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

五

また次第に歌の見つかるときが来れば愉しいのである。

五

西行は文治三年七十歳のときに、自分の歌を三十六番の歌合に番えて、『御裳濯河歌合』と名づけ、俊成に送って批評をたのんだので、俊成は間もなく判をしてかえした。やがてまた三十六番の自歌合『宮河歌合』を俊成の子定家に送って判をもとめた。定家は西行七十二歳の文治五年八月になって返した。それを見て西行は、近頃のり出してきた定家も将来有望の歌人らしいといったそうである。定家はそのとき二十八歳、『千載集』奏覧の翌年であった。彼に並ぶ家隆もいたし、年上の寂蓮もいた。異父兄で一代の画伯隆信もいた。歌の上には新しい傾向が動きつつあった。この傾向が行きつくところに『新古今集』の声調が花を開いたのである。

そこには西行の思いあまる詠歎は影をひそめ、なにか優雅なきぬずれの音を思い、洗煉をかさねた気品の揺曳に身をつつむ宮廷の女性を思うのである。

三島江の枯れ蘆の葉には薄霜のほの白い頃、昼となれば芽をふくほどの春風のほの温い肌ざわりである。やがて若蘆の芽のくきくきと出揃う頃は、夕月の影をくだいて満ち潮のなごりが白ら白らと頭越しに流れよるようになる。