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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《人外魔境(じんがいまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 101,713 字 · 205 頁

青空文庫

橇犬の嗅覚は、磁石よりも鋭い。奴らは、前に往った犬の糞尿や凍傷の血の滴りを、なん月後でもちゃんと嗅ぎ分けるから……」

しかし、この鉄の男は顔色も変えていない。微妙な、ほのめきを投げる深夜の太陽のしたで、とおい、雪崩の音を聴きながら、じっと考えているのだ。周囲の、山巓も氷河もまったく死の世界。人を狂わせる極地特有の孤独のなかで、彼の頭はますます冴えるばかり。

「人間は……いや、あの人種は、ことによったら冬眠ができるのかも知れない。そのほかに『冥路の国』の謎を解く方法はないだろう。エスキモーが、『冥路の国』へ招かれるときは、こんな状態になる。脈が聴きとれず消えなんとし、体温は死温程度にさがってくる――それは、取りも直さず冬眠とおなじ状態だ。

ことによったら、異常な寒気に逢った場合、そうなるのではないか。そして、幻覚を見、遮二無二身をおこし、橇をかって氷の涯へと飛んでゆく。もちろん、そうした場合だから、なんの苦痛も感じない。運よく氷罅にも落ちずに行き着けた奴らが、『冥路の国』の中で一部落を作っているのではないか。冬中、体中の脂肪に養われて、氷のしたで眠る。