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はいくへのみち
俳句への道
高浜 虚子
線上閱讀高浜 虚子《俳句への道(はいくへのみち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 60,608 字 · 120 頁
」
と言うと芭蕉は、
「そうであった。その時私の見た景色は、さっと風が吹いて木の葉がはらはらと散ったが、すぐそれはもとの通りに静まった。」
とそう言い交したのである。「お寒うございます」というのと大した相違はないが、その初時雨の降った時の景色を言い合って挨拶を交したのである。共にその景色に同感し合い語り合ったのである。景色を通じて心は共鳴したのである。そうしてその景色を諷詠し合ったのである。
市中は物のにほひや夏の月 凡兆
あつし/\と門/\の声 芭蕉
「暑い夏の夜市中を通っておるとむくむくと物の匂いが鼻を衝く、肴屋も果物屋も酢屋もまたごみ溜の匂いも交って鼻を衝く。空にはうん気につつまれた夏の月が出ております。」
と凡兆が言うと、
「本当にそうだ。あれ御覧。門ごとに人が出ていて、暑い晩だと口々に言っているではないか。」
と声に応じて芭蕉が答えたのであった。これもその景色に同感し合って互に心の挨拶を交したのである。
灰汁桶の雫やみけりきり/″\す 凡兆
あぶらかすりて宵寝する秋 芭蕉
「桶の灰の中に水を入れて、下の口から少しずつ灰汁が落ちる仕掛になっている、古風な家のさま、その灰汁の音が何時の間にか止んでしまった。