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こじじゅんれい

古寺巡礼

和辻 哲郎

線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁

青空文庫

あの偉大な金堂薬師如来の作者がわからないのも無理はないであろう。

ただにこの作者ばかりではない。薬師寺大伽藍の建築家、あるいは大官大寺九重の塔の建築家、――その他あらゆる彫刻家画家は、すべて名をさえ留めていない。鮮少な遺品から判ずると当時の造形美術は驚くべき高さに達していたはずであるが、それらの偉大な芸術家の名は、天武帝の侍医であった百済人の名ほどにも顧みられなかったのである。しかし『書紀』が閑却しているからと言って、当時の社会が同様に冷淡であったと見るのは当たらない。『書紀』は官府の文書の集録に過ぎぬ。民族の意志や感情を表現することは、もともとこの書の企てたところでない。当時の文化はむしろ『書紀』に名を録せられない中流の知識階級によって担われていたと見らるべきである。たとえばわれわれはあらゆる民家に仏壇を造るべき命令の下ったことを知っている。この命令はある程度まで遵奉せられたであろう。そこに盛んな需要がある。供給者もまたなくてはならぬ。もしこの仏壇の最も優秀な例を玉虫の廚子や橘夫人の廚子に認め得るとすれば、仏壇の標準がすでに徳川時代のごとき低劣なものではない。