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こじじゅんれい

古寺巡礼

和辻 哲郎

線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁

青空文庫

五

たといわれわれがある仏像の前で、心底から頭を下げたい心持ちになったり、慈悲の光に打たれてしみじみと涙ぐんだりしたとしても、それは恐らく仏教の精神を生かした美術の力にまいったのであって、宗教的に仏に帰依したというものではなかろう。宗教的になり切れるほどわれわれは感覚をのり超えてはいない。だから食堂では、目を楽しませると共に舌をも楽しませていいこころもちになったのである。

食後T君と共にヴェランダへ出て、外をながめた。池の向こうの旅館の二階では、乱酔した大勢の男が芸妓を交えてさわいでいる。興福寺の塔の黒い影と絃歌にゆらめく燈の影とが、同じ池の面に映って若葉の間から見えるのも、おもしろくなくはなかった。われわれはそれを見おろすような気持ちになって、静かに雑談にふけった。(五月十八日夜)

五

廃都の道――新薬師寺――鹿野苑の幻想

今朝Z君夫妻がついた。顔を見るなりすぐに言い出したのは、昨夜東京で催されたシコラの演奏会のことであった。Z君はそれをきくために出発をおくらせていたのである。

Z君は少し落ちつくと、早速気早な調子で巡礼の予定をきめにかかった。十日ほどの間に目ぼしい所を大体回ってしまうような、欲張った計画ができあがった。