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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁
十二
自分でこの蒸し風呂を試みて、その温まり工合や、肌の心持ちや、体のグッタリとする様子や、またありたけの汗を絞り出したあとのいい心持ちなどを経験してみたら、一層その感じがあるだろうと思う。こういう官能的な現象で昔を想像するのはあまり気のきいたことではないが、しかし最も容易な道である。
――あとでZ君に西洋の蒸し風呂の話をきいた。快く暖まっている大理石の腰掛けのすべすべとした肌ざわり、蒸気にむされてグッタリとしたからだ、流るる汗、汗を拭き落とす道具、そうして爽快なシャワア、いかにも気持ちが好さそうで、法華寺の浴室とは大変な違いである。しかしこのトルコ風呂も、もとはアジアから出たもので、あるいは天平の温室と同一の源泉を持っているのかも知れない。ただそれが一つの民族の生活の内に不断に生かされて来たか否かで、これほど著しい相違を造り出したのかも知れない。
十二
法華寺より古京を望む――法華寺十一面観音――光明后と彫刻家問答師――彫刻家の地位――光明后の面影
湯殿の前の庭に立って東の方をながめると、若葉の茂った果樹の間から、三笠山一帯の山々や高台の上に点々と散在している寺塔の屋根が、いかにものどかに、半ば色づいた麦畑の海に浮かんで見える。