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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

竜之助は、そんな考えで飲んでいるのではない、舌ざわりの、とろりとして、含んでいるうちに珠玉の溶けてゆくような気持を喜んで、一杯、一杯と傾けている――蚊遣火の烟が前栽から横に靡き、縦に上るのを、じっと見ている様子は、なんのことはない、蚊遣火を肴にしているようなものです。

「誰か湯に入っているな、お早どのかな」

湯殿で湯の音がする。廊下をずっと突き当ると、鍵の手に廻ったところに物置と背中合せに湯殿がある、それは女たちの入る湯殿である。いつも、こんな時には留守居役の老女中、お早婆さんが、居睡り半分、仕舞湯に浸っているはずである。

「ウム、太鼓の音がするな、里神楽の太鼓――子供の時には、あの音にどのくらい心を躍らせたことであろう」

笛と太鼓の音は、すぐ前の竹藪にひびいて遠音ながら手にとるようです。竜之助は、それから沈吟して、盃をふくんでいると、庭先を向うの椿の大樹の下から、白地の浴衣がけで、ちらと姿を見せたものがあります。

「婆さんか」

竜之助は見咎めて呼んでみますと、

「いいえ、わたくしでございます」

「ああ、あの、お豊どのか」

「はい」

お豊は、この家に預けられています。