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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁

青空文庫

燈火の下で合せ鏡までしてその髪の出来具合をながめたり、また立ってその打掛の裾を引いてみたり、立ってみたり居てみたりして堪らない心です。

お君がこうして夢中の体でいる時分に、その窓の外で風の吹くような音がしました。夢中になっていたお君には、その音などは耳に入ることがありません。つづいて刷毛を使ってみたり髱をいじってみたり、どこまで行ってこの奥方ごっこに飽きるのだか、ほとほと留度がわからないのであります。

しかしながら、その風の吹くような音が止んで直ぐに、それほど夢中であったお君が、その夢を破られないわけにはゆかなくなったのは、それが風の音だけでなかったからであります。

「ワン!」

というのは犬の声、愛すべきムク犬の声でありましたから、この声だけには、お君もその逆上せて逆上せて留度を知らない空想から、今の現在の世界へ呼び戻されないわけにはゆきません。

「ムクかい」

お君はあわてて立ちました。

「お前、今までどこへ行っていたの、こんな晩にこそお邸にいて御門を守らなければならないのに、今夜に限って外へ出歩いて、いくら呼んでも出て来ないのだもの、いくら心配したか知れやしない」