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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁

青空文庫

「うーん」

と言って、がんりきが地上で唸っているのを聞けば、打ち倒された上に、手強く締めつけられているもののようでありました。さては役人の手が、もうここまで廻っていたかとお松は驚いて、木蔭に身を忍ばせました。それにしても不思議なのは、もし役人であるならば、御用だとか、神妙にとか言葉をかけて打ってかかるべきはずであり、なにも、がんりき一人だけを狙わないで、当の自分にも、言葉がかかりそうなものです。それを不意に闇の中から出て、がんりき一人だけを打ち倒したのはどういうつもりであるか、さっぱりわかりません。

「覚えてやがれ」

ややあって、こう言ったそれは、がんりきの声でありました。それは少しばかり遠いところへ離れて聞えました。大地へ打ち倒されたのがどうかして起き上って、命からがら逃げ出した捨台詞のように聞えて、それから後は静かになりました。お松は身体を固くして木蔭に隠れていると、

「もしもし、若いお武家」

それは聞いたような声であります。聞いたような声で、たしかに自分を呼ぶのだとは思いましたけれども、お松はこの場合に咄嗟に返事をすることができませんでした。それ故になおも身を固くして木蔭にひそんでいると、どうやらその者が自分に近く探り寄って来るらしくあります。