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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁
お銀様は、畳の上へこぼした小判の包みが手に触らないのであります。やっと拾ってまた懐中へ入れるとまたこぼれます。お銀様はとうとう、その幾つかの小判の包みのうち一つを取落したままで、行燈の火を細めて外へ出ました。
外は昨晩のように深い靄はありませんでしたけれども、闇夜であることは昨晩と少しも変りはありません。
お銀様が父と言い争っている時分から、この家の縁先の網代垣の下に黒い人影が一つ蹲まっていて、父子の物争いを逐一聞いていたようです。
伊太夫が怒って足音荒く立退いてしまった時分に、そろそろと縁先へ忍び寄って戸の隙間から、お銀様の挙動を覗いているようでありました。抱えるようにしていたけれど、両刀の鐺は羽織の下から外れて見えています。
お銀様が今、戸をあけて外へ出ようとした時に、この怪しい人影は、また前のところへ立退いて蹲まっていました。お銀様がどこともなく闇の中へ消えてしまった時分に、またその怪しの人影はそろそろ網代垣の下から身を延ばして、以前の通り縁先へ忍び寄り、それから雨戸へ手をかけました。お銀様のいま立てきったばかりの戸の裏には鍵をしてありません。