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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁

青空文庫

雪であることに、怖々ながらお銀様も見惚れます。

松を見ているお銀様の横顔を、神尾主膳は例の貪婪な眼つきで見据えていました。

「お銀どの」

「はい」

「いい松であろう、木ぶりと申し枝ぶりと申し、あのくらいの松はほかにはたんとあるまい、あれは馬場の松……武田の名将馬場美濃守が植えたと申す馬場の松」

「ほんとに見事な松でございます」

「そなたの家は甲州で並ぶもののない大家、それでもあのくらいの松はあるまい、あのくらい見事な松は、そなたの屋敷にもあるまい」

「わたくしどもの庭にも、このような見事な松はござりませぬ」

「左様であろう、この神尾は貧乏だけれど、そなたの家にも無い物を持っている」

と言って、神尾は二三度頷きました。それからニヤリと笑って、

「まだまだ、神尾の家には、そなたの家には無くて、神尾の家だけにある宝が一つある、それを見せて進ぜようか」

と言いながら主膳は、またしても例の梨子地の鞘の刀を引寄せて、

「この刀なんぞもその一つじゃ、よく見て置かっしゃれ、鞘はこの通り梨子地……鍔の象眼は扇面散らし、縁頭はこれ朧銀で松に鷹の高彫、目貫は浪に鯉で金無垢じゃ」

主膳はその刀を取って鞘のまま、お銀様の眼の前に突きつけました。