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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁

青空文庫

石和で腹をこしらえた米友は、差出の磯や日下部を通って塩山の宿へ入った時分に、日が暮れかかりました。

「もし、そこへ行くのは友さんじゃないか」

袖切坂の下で、やはり女の声でこう呼びかけられたから米友は驚きました。

「エ、エ!」

眼を円くして見ると、

「ほら、どうだ、友さんだろう」

と女はなれなれしく言って傍へ来るから、米友はいよいよ変に思いました。

もう黄昏時でよくわからないけれども、その女はこの辺にはあまり見かけない、洗い髪の兵庫結びかなにかに結った年増の婀娜者のように見える。着物もまた弁慶か格子のような荒いのを着ていました。

はて、こんな人に呼びかけられる覚えはないと米友は思いました。

「誰だい」

「まあ、お待ちよ」

と言って女が傍へ寄って来た時に、はじめて米友は、

「あ、親方」

と言って舌を捲きました。これは女軽業の親方のお角でありました。なぜか米友ほどの人物が、このお角を苦手にするのであります。この女軽業師の親方のお角の前へ出ると、どうも妙に気が引けて、いじけるのはおかしいくらいです。

もともと、黒ん坊にされたのは承知のことであって、道庵先生に見破られたために、その化けの皮を被り切れなかったのは米友の罪でありました。