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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ(全)(しんきだんクラブ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 頁
お先っ走りの八、――木戸番と使い走りをやって居る塩辛声の八は、親分の渋い顔を見ると、縁側からこんな呑み込んだ事を言います。
「待て待て誰が免倒臭えなんて言った」
「ヘエ――」
「どうせ、素人衆のももんがあ見てえな細工だろうが、兎に角一応見て上げよう。長次が拝見いたしますって、丁寧に通すんだぞ」
「ヘエ――」
両国に見世物小屋を持って居る長次の許へは、時々飛んでもないものが舞い込みますから、もとより大抵の事では驚きません。やがて八に案内されて来たのは、未だ若い立派な男ですが、尾羽打ち枯らして見る影もない風体、三尺四方ほどに、高さ六尺にも余る素木の箱を、二、三人の子分の者に運ばせて、恐る恐る縁側からにじり込みます。
「御免下さい、私は彫物師の松本鯛六と申す者、唯今は無理な願いを早速お聴き届け下すって有難う御座います」
年の頃二十七、八、妙にやつれは見えますが、細面に切れの長い眼、少し青白い顔も肌合の職人らしく、どう見ても田舎者や素人衆などではありませんが、其の代り身扮は如何にも粗末で、畳の上に並べた膝の上にも、克明にお辞儀をすると、正面に見れる肩のあたりにも、鍵裂やら継接やらが、二つ三つならず算えられます。