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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ(全)(しんきだんクラブ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 頁

青空文庫

涼み船に啖呵の虹

徐ろに取り上げた匕首の尖、一寸眺めて左脇腹へ、

「あッ」

何処から打ったか、発矢と礫、右の拳を打たれて、左馬之助は思わず匕首の手をゆるめました。

「馬鹿ッ」

と一喝、縁側の障子はガバと蹴開かれました。

「何者ッ」

「俺だよ南条、仔細は残らず聞いた」

「…………」

「無念は察してやるが、女二人まで奪られて、自分の腹を切るような腰抜けとは思わなかった」

堤軍次は、毒舌と一緒に飛び込んで、左馬之助の手から匕首をもぎ取ります。

「何を言う堤」

「そう言っちゃ済まないが、お雪殿は美しいには美しいが、ザラの武家の娘だ。お金はそうは行かない」

「…………」

「あれは此の世の宝だ、女の中の女だ。どんな事があっても奪い還せ」

「…………」

涼み船に啖呵の虹

それから三月あまり、南条左馬之助は二度食禄を増して、近侍頭に取り立てられました。二人まで女を奪られて、表面怨めしい顔もしないのですから、主君本田北見之守のお覚えの目出度いのも無理の無いことです。

藩中の朋輩は、後ろ指を差して嘲り笑いましたが、南条左馬之助は、聊か恥じる色もありません。

「あれは二本差した幇間だ、女二人の褌で身上を起こした」