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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ(全)(しんきだんクラブ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 頁

青空文庫

蘭奢待を盗んだ美しい曲者

赤い夕陽が目黒の森に落ちて、春乍ら悲しい風物です。

蘭奢待を盗んだ美しい曲者

「これ、お女中」

「ハッ」

「それは何んで御座るな」

宝蔵に梅雨前の風入れを了って、やがて一と片付けしようと言う時、御隠居様の御用と名乗って入って来た英山公附の女中が、何やら袖に隠して、いそいそと出て行こうとしたのでした。

見とがめたのは、小堀平治、年は若いが宝蔵の鍵を預るほどの武士、眼にも心にも聊かの油断がありません。

「砧青磁の香爐を持って参れ、当分手許に差し置く――と御隠居様の仰せで御座います」

小腰を屈めたのは、腰元のお園、宝蔵の陰気な空気の中にも、ほんのり匂うような美しさ、堅造の小堀平治も、聊かたじたじと来ましたが、気を取り直して、

「もう一品、その袖の下にあるのは何んで御座るな」

「…………」

「役目の手前、一度拙者が目を通した上でなければ持ち出しはなりませんぞ、お出しなさい」

「…………」

お園は悚然と立ち淀みましたが、まだその懐の前に掻い抱く袖を開こうとはしません。

「見せられなければ、調べようがある、――待て待て」

小堀平治はお園が探して居た唐櫃に近付きました、馴れた眼で一と通り眺めると、何れの品に手を触れたか直ぐ判ってしまいます。