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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ(全)(しんきだんクラブ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 頁

青空文庫

「申すまでもなく両国の活人形は、宮川光遙先生が心魂をこめて作り上げた、十二ヶ月の年中行事、先ず当代並ぶ者もあるまいと言われる結構な作だ。お前さんも其の道の方のようだから、これ位の事がお解りにならない筈は無い――多分、あの中へ立ち交っても、引けを取らないような見事な作をお持ちだろうな」

これは止めの釘、出来の悪い時断りを言う為に、長次は斯う伏線を張って置きます。

「宮川先生の御作には及びも付きませんが、私には又私だけの勘考も、自慢もある積りで御座います、どうぞ御覧下すって」

六尺の箱を部屋の隅に立てて、桐の蓋を払うと、中に納って居るのは、華魁の道中姿、顔と胴体は木彫の人形に彩色を施したものですが、衣裳も帯も髪飾も本式で、その美しさは眼もさむるばかり、物に動じた事の無いのを自慢にして居る左衛門の長次も、さすが、

「あッ」

と、二の句が次げません。

生え際の匂い、霞む眉、澄み渡る瞳、鼻筋が柔かに通って、唇の婀娜めかしさは滴るばかり、第一、顔の色艶が活々として、人形とは思えない不思議な魅力があるのです。

左甚五郎が彫った京人形――あの芝居の所作にある奇跡の人形は、多分こんなものだったかも知れません。