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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ(全)(しんきだんクラブ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 頁
獄門にかけた首に溢るる法悦
それは、彫物師の松本鯛六、自分で作った華魁人形の奇跡の数々を陳じた上、あの晩自分は、仔細あって上州屋の庭先に忍び込んで居たが、おさよを殺したのは決して夫の佐吉では無い、佐吉がおさよと喧嘩をして引き上げた後、おさよが嫉妬の余り匕首で人形を刺そうとして、反って人形に刺されたに相違ないと言うのです。
人形が人を刺す? そんな事がある可き筈は無い、――と言うのは今の人の智恵で、文化文政度の、人間が夢みるようなロマンチックな空気を呼吸して居た頃は、こんな事は何んの疑いもなく受け容れられたのです。
それに、この人形の奇跡は両国界隈で一時評判になった事でもあり、木戸番の八は人形欲しさに入り込んで、佐吉の狂態にムラムラッとして、ツイ斯んな事を言ってしまったと解されない事もありません。
一つは上州屋の身上を半分減らしたという運動も効を奏したのでしょう。一と通り形式的な取り調べがあって、二日の後には佐吉は免され、訴人をした木戸番の八は、無宿牢へ叩っ込まれてしまいました。
獄門にかけた首に溢るる法悦
佐吉に代っておさよ殺しの下手人として縛られたのは、松本鯛六作名妓小紫の人形、道行姿の艶やかな人形を、雁字がらめに縛り上げ、裸馬に乗せて鈴ヶ森へ引き出した時は、江戸中煮えくり返るような騒ぎでした。