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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁
「これは一つ木のお屋敷へ預けるようにと、書いてございましたので」
孫七は語り終ってから、こう云って油紙に包んだ物を渡した。
半之助はそのとき十四になっていた。もうつまらない妖怪談などを信ずる年ではなかったが、この出来ごとの異様さと、一種の鬼気に似たぶきみさとには、相当つよくまいらされた。
――かんば沢。
むろん見たこともないが、どす黒く叢林の生い繁った、もののけやあやかしのわらわらとうごめいている、妖しい陰暗たる谷間。そんな風景が想像されたし、白い亡霊の行列とか、狸ばやしなどの話とともに、思いだすたび不快な、ぞっとするような気分におそわれたものであった。
彼が十六歳になった年の七月。虫干しのときに、偶然、叔父の遺品を見た。土蔵の中を片づけているといつか孫七の持って来た、あの油紙の包がみつかったのである。半之助はすぐに紐を解いた。油紙は二重になっており、さらに風呂敷で包むという厳重さで、その中には数冊の筆記と、二枚の大きな地図ようのものがあった。
地図の一は武田氏の旧城址と、その出城の位置を考証したものであり、他の一は甘利郷の略図らしかった。筆記は見聞記が二冊、日記が三冊、それからもう一冊、表紙に「みどう清左衛門に関する調書」