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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁

青空文庫

「ねえ、そうでしょう、わたくしの云うこと、そんなに違いはしないでしょ」

「そんなところでしょうね」

半之助は多少たじたじのかたちで、しかし好便に口をにごした。

「大名の若殿でもなし、大身の子でもないけれど、遁世して来たということは、貴女の推察どおりです」

「それでたくさん、もうなにも仰しゃらないで」

花世は深い溜息をつき、溶けるような眼で、じっと温たかく、半之助をみつめた。それは、両手で力いっぱい抱き緊める代りに、眼でかき抱く、といったような感じの、まなざしであった。

「いつまでも此処にいらっしゃるといいわ」彼女は云った、「春も夏も秋も、冬は、そうね、冬はちょっと困るけれど、此処は一年じゅう美しいし、珍しいことや楽しいことがたくさんあるわ、そして、いつまでも、いつまでも乙女が付いていて、お世話をしてあげますわ」

「それができれば有難いが」

半之助はこう云いながら、立って、湯沸しを取って来て、二人の椀に湯を注いだ。

「しかし、この土地の人たちは、よそから来た者を、住まわせては呉れないのでしょう」

「いいえ、乙女が付いていれば大丈夫、あたしが付いていさえすれば、誰だって、決して、あなたに指を触れることもできやしないわ、決してよ」