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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁
「こっちだ、もう少し左」
「ぜんたい、甘利ってえなあ、どのへんですかね、よっぽど遠いんですか」
「甘利だって」若者はふり返った、「そんなことを誰に聞いた」
「誰って、誰に聞いたってこともねえが、そんなふうに云ってるんじゃねえんですか」
「それは聞き違いだ」若者はまた水のほうへ向きなおった、「本当は駿河の奥に、富士谷というところがある、柳沢さまの、元の御領分だが、そこに雨降り山というのがあって、それが……」
こんな問答をしているうちに、いつか佃島から東へまわっていた。そして、気がつくと、すぐ向うに、小舟が二艘停って、どちらにも笠を冠った男が三四人、竿を出して、なにか釣っていた。
「これはいけない」若者は舌打ちをした。
かれらにもし若い女主人のはだか姿をみつかったら、とんだ恥をかかなくてはならない。若者はこう思って、注意を与えるために、水の中を覗きこんだ。だがそれはすでにおそかった。若者が覗きこんだとき、少女は舟を潜りぬけて、反対がわに浮きあがり、ひゅうっ、と息を吹きながら舟ばたへ手をかけた。
「くやしい、また逃がした」
「ああ、乙女さま、向うに」
若者が手を振り、出るなという身ぶりをした。