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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁

青空文庫

もちろん姉は承知しなかった。承知しないばかりでなく、逆に自分の計画を話した。そのことは、花世には少しも関心はなかったが、権之丞はひどく狼狽し、いろいろ策を按じたとみえて、

――駒込へおいでなされ。と花世に囁いた。柳沢邸へいらっしゃってから、うまくぬけだすように手配を致します。

権之丞の囁きを聞くと、花世はおどりあがって喜んだ。

――甘利へ帰れる。

それは待ちかねていたことだ。

彼女が江戸へ来たのは四十日ほどまえである。妹にも江戸の風俗をみせたいから、という登世の希望で、なかばむりじいに呼びよせられた。

来てみると、どこを見物させるわけでもなく、毎日のように髪や肌のていれをさせられたり、化粧のしかた、立ち居の作法、言葉の訛りをなおすこと、など、およそ心外なことばかりやらされた。

甘利にいれば、川にもぐり、山を駆け、鳥や野獣を追い追われて、自由に、無拘束に、暴れまわることができる。

それが江戸では、屋敷まわりのほか、どこへも出ることができない、庭の樹へ登ったり、屋根へあがったりすれば、すぐ怒られる。大川や海へも、潮風は肌を荒すから、といって、なかなか出して呉れなかった。